CTの管電圧のあれこれ

CTを学ぶ

CT検査で固定管電圧が使用される目的

放射線技師であれば管電圧を意識しない日はないと思います。(MRI担当者は除く)

レントゲン検査は手なら50kV、腰椎なら75kVと撮影部位によって電圧を変更しましが、CT検査は頭だろうが腹部だろうが120kVの固定管電圧を使用することが定石です

それはなぜでしょうか?

答えはCT値を一致させるためです。

CT値は物質の減弱係数により決まり、水を0HUとして物質密度を相対的に数値化しています。

CT値=(μ‐μ0)/μ0×1000

μ:対象の線減弱係数 μ0:水の線減弱係数

上記の式は国試でも頻出される数式ですね。

そして線減弱係数μは以下の式によって導き出されます。

μ=μ×ρ

μ:線減弱係数 μ:質量減弱係数 ρ:密度

ここで大事なのは、μ(質量減弱係数)はX線エネルギー(≒管電圧)に依存し、ρ(密度)は物質に依存するということです。

つまり、管電圧を変動式にすると、μm(質量減弱係数)が変わり、線減弱係数が変わり、CT値が変わってしまいます。

読影医は時としてCT値で「これは脂肪組織だな」等判断するため、同じ物質でも検査部位によってCT値がコロコロ変わってしまっては読影の妨げになります

そのため慣例的に管電圧は変化させずにCT検査を行っております。(低電圧撮影に関してはまた別日に載せます)

kVとkeVの違い

管電圧は120kVの固定値ですが、エネルギーは120keVではありません。

どういうことでしょうか?

CTで用いられるX線は連続エネルギーであり、120kVなら0~120keVのエネルギー情報を保持しています。

keV :キロ エレクトロン ボルト  ※120keVは120「ケブ」と略されます

エレクトロン(electoron)=電子

そのエネルギー情報をグラフに表したものが「エネルギースペクトル」で横軸がエネルギーkeV、縦軸がX線強度(フォトン数)です。

日本にあるCT装置のほとんどは積分型と言われ、このエネルギーを積算してX線情報を得ています。

(積分型に対して光子計数型CT装置が登場してきましたが、それはまた後日)

まとめ

今までなんとなく120kVを使っていましたが、なぜ固定値なのか調べてみました。

変動管電圧にすると脂肪がー40HU、肝臓が+60HUなどの組織ごとのCT値が崩れてしまうからなんですね。

今回のお話から、今後はビームハードニングについてや勉強会で頻出のDECT・PCCTについて発展して載せていきたいと思います。

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